里山悠々録

里山の家と暮らし、田んぼや畑、そして水墨画のことなどを記録していきます

今年のコメは平年並を確保し品質は良好

 
今年のイネは猛暑で成熟期が9月5日頃と平年より2週間以上早まりました。
しかし、秋雨前線の影響などで結局は例年と変わらない刈り取りとなりました。
一見したところ悪くなさそうに見えていましたが、何より懸念されたのは高温障害の発生です。
結果、収量は平年並を確保できました。平年並の範疇でも昨年を若干上回ります。品質も良好だったので安堵しました。
今年は刈り取り時期になって降雨の頻度が多くなり倒伏する田んぼも目立ちました。中にはべったりと伸しイカのようになった田んぼも散見されます。
我が家は肥料を多くして多収を狙うような作り方はしないので酷い倒伏にはなりません。ですから平年並みの範疇なら良しとします。
過日刈り取りし調製が終わった玄米を作業委託している法人のライスセンターから搬入しました。
 
出荷する玄米は、法人のライスセンターから直接出荷します。
搬入したのは我が家で処理する分です。我が家郎党消費分、知人から依頼されている分、その他贈答用。
まず気になるのは品質です。高温障害の発生はないのか。
今年はシーズン出だしのニュースで全て1等米といった情報が流れていました。
しかし、自分のコメを自ら確認するまでは安心できません。搬入したら直ちに見たい。
高温障害を受けたコメは米粒が透き通らない白未熟米や充実度不足の玄米が多くなります。
出荷する玄米の等級格付けは水分含量と見かけの整粒で決定されます。
1等米は水分含量15%以下、整粒歩合70%以上となっています。
玄米をカルトン皿に取って確認します。
 
一目品質良好。整粒歩合90%以上でしょう。1等米は間違いありません。
 
今年は異常な猛暑ながら日照も多かったことが品質の低下を抑制したと思われます。
出荷の等級は見かけだけで判定されます。食味は等級には直接は関係しません。
しかし、我が家のコメを希望してくれる方がいるので味を確かめないわけには行きません。
我が家の田んぼはミネラル豊富な強粘土質土壌、昼夜の気温差が大きい里山の気候と美味いコメができる十分な条件があると思っています。
まずは自らが最初に食してみることが毎年の恒例です。
釜は相当に古くなりました。それでも新米の炊き上がりは別物です。
 
例年のようにまず仏壇と神棚にお供えします。
茶碗によそってみます。光沢と香りは十分。
 
噛めば強い粘りとしっかりとした歯ごたえ、新米らしい甘味や旨味が感じられます。
今年も安心して提供することが出来ます。依頼されているのは玄米袋のままです。
玄米を纏めて配るところもありますし、土蔵に保管して置き必要な都度取りに来られる方もいます。
白米の贈答品もいくつか作ります。
普通は10㎏袋ですが、5㎏袋と3kg袋もわずか作りました。
 
遠方に宅配で贈るものは箱入りにします。
 
30㎏玄米袋をそのまま贈答にするものも若干あります。
今はコメの価格も上昇したので贈答品としても以前より有り難みが出てきたかもしれません。
 
食管制度時代の20数年前までは玄米1俵(60㎏)2万円以上がごく当たり前でした。その後、ほぼ一世代の長い期間コメは安値のまま放置されてきました。一時はJAの仮渡し金いわゆる概算金が1万円を割る価格まで低落したのです。コメを作るモチベーションは落ちるところまで落ちたと言っていいでしょう。
その長い間に溜まり溜まったマグマが一気に噴き出したのが昨年来のコメ事情です。
昨年産のJAの概算金は2回の追加払いが行われるという異例の事態になりました。他の集荷業者に買い負ける状態になったからです。
今年はと言うと早々に概算金が提示され、刈り取り期を迎えると追加払いが決定、3万円を超えました。
昨年同様他の集荷業者がJAの概算金を上回る価格で買い付けると言う状況が続いているようです。
昨年までなら農水省が需要量とコメの作況を発表していましたが、今年は正式な数値の発表を見送りました。これは小生も多分こうなるだろうと予測していました。頑として認めなかった実態との乖離を認めざるを得なくなり、かなり大雑把な見通しを示したのみです。
どうも今年産のコメの価格は需給とはあまり関係なく買い付け競争で決定されている印象です。
それでも需要の見通しがなければむやみに買い付ける訳はないので十分に売れると見込んでいるのでしょう。確かに備蓄米の多くが放出されているためそれを補充する必要もあり、意外に需給は締まっているのかもしれません。
当地方でも作付面積は少し増えていますし、来年はさらに増やすという声も結構聞きます。価格上昇が生産者のモチベーションに繋がっている訳です。
間もなく我々世代の退場が見えているので構造的な問題が顕在化しますが、短期的には今度は供給過剰の懸念が出てきます。
何れにしても今の価格は想定外で、今後、価格の乱高下が常態化する前兆のように見えます。コメの価格も青果物化してしまうということでしょうか。
しかし、キャベツはすぐ腐るので短期間でリセットされますが、コメは腐らないのでリセットされず、しかも量が膨大なため始末が悪いのです。